マングース防除、在来ネズミ類の回復へ寄与
―奄美大島、懸念のクマネズミ増加にはつながらず
:国立環境研究所/東京大学/自然環境研究センターほか

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マングースとネズミ類の経年変化。ネズミ類のグラフの実線は自然度の高い地域、破線は生息改変が進んだ地域の値(提供:国立環境研究所)

 (独)国立環境研究所と東京大学、(一財)自然環境研究センター、環境省那覇自然環境事務所の研究グループは11月6日、奄美大島で行われているマングース防除事業が、固有種である在来ネズミ類の回復に寄与し、加えて、当初懸念されていた外来種クマネズミの増加にはつながらなかったとする解析結果を発表した。

 

■生息に好適な自然林保全が重要

 

 世界自然遺産候補地の奄美・琉球では、マングース(特定外来生物フイリマングース)の捕食圧が固有野生生物の存続を脅かしてきた。そのため、2000年から環境省那覇自然環境事務所によりマングースの防除が実施されている。
 研究チームはこの防除で収集・蓄積された2002年度から2009年度にかけてのデータをもとに、外来捕食者の防除対策が在来種、外来種に及ぼしている影響や、人為的な生息地改変がもたらしている影響などによる複合要因の効果を解析した。
 その結果、防除によりマングースの密度が低下する過程で、固有種であるケナガネズミとアマミトゲネズミの在来ネズミ類に顕著な増加が見られた。しかし、外来種のクマネズミについては、マングースが減っても個体数の増加は起こりにくいことがわかった。
 在来ネズミ類では天然林における環境収容力が高かったのに対し、クマネズミは農地や市街地のような人為的環境でより高い密度になっていた。
 これらのことから、マングース防除による捕食圧からの開放はアマミトゲネズミやケナガネズミにより有利に作用し、生息に好適な自然林を中心に在来種の急速な回復が見られたと判断されるという。
 在来ネズミ類を保全し、クマネズミを増やさないためにはマングースの防除だけでなく森林環境の保全も重要と指摘している。

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