バイオ燃料の生産性の高いイネを作出
―細胞壁を改変し、糖化効率の高いセルロース量を増加
:筑波大学

 筑波大学は11月5日、バイオ燃料の生産に有用なセルロース量の多いイネを作り出すことに成功したと発表した。燃料生産に支障となる植物細胞壁(植物繊維)中のヘミセルロースを分解する酵素「アラビノフラノシダーゼ」の活性を高め、イネの細胞壁を改変することで実現した。食用とはならない稲わらの部分を、バイオエタノール生産効率の高い材料として利用できそうだという。

 

■稲わらの利用に道拓く

 

 バイオ燃料の供給を拡大するため、食用に適さない植物細胞壁を構成する植物繊維の活用が注目されている。ただ、バイオ燃料(バイオエタノール)の原料となるセルロースはセミセルロースなどと結合して分解されにくい状態で存在しているため、その処理や生産工程の効率化、低コスト化が課題視されている。
 研究チームは今回、材料(植物体)自体をバイオ燃料生産向きに変える研究に取り組み、イネの生育に影響を与えることなくイネを改変させることに成功した。
 具体的には、セルロースを架橋する多糖ヘミセルロースの一種を分解する酵素アラビノフラノシターゼの遺伝子を過剰に発現させ、架橋性多糖を減らした。多糖の減少と同時にセルロース含量は約30%増加し、糖化効率の良いイネが作出できたという。
 生育への影響を調べたところ、草丈や稔実率に影響はなく、強度は増加傾向が認められた。可食部の種子への影響は認められなかったという。
 今回の成果は食料と燃料の生産を兼ねた稲作の可能性を示している。研究チームは今後、細胞壁の変化と病害との関係なども調べたいとしている。

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