(独)国立環境研究所は6月28日、北アルプスなど高山帯の積雪域と植生の変化をデジタルカメラの画像から自動検出する新手法を開発したと発表した。画像に記録された各画素の色を分析し、融雪過程や植物の生育期間を推定する。同研究所は新手法を高山帯に展開することで、これまで難しかった長期にわたる調査が可能となり、気候変動による高山生態系への影響評価に役立つと期待している。
■画像の画素の色を分析する手法開発
研究は、北アルプスの立山室堂山荘とNPO法人北アルプスブロードバンドネットワークの協力を得て進めた。室堂山荘や涸沢山荘、北穂高小屋など5カ所に設置したカメラが2008年から2011年まで毎日1時間おきに撮影した30万画素の高解像度画像を使って融雪過程や植物の生育期間を推定する手法を開発。2010年からは2100万画素の高解像度カメラも設置して解析した。
新手法では、画像に写った積雪地点と非積雪地点の各画素の赤緑青の色の強さ「RGB値」を統計的に処理して融雪状況を検出。また、RGB値全体に占める緑色の割合の増減から生育開始日と生育終了日を推定、植物の生育期間を自動検出できるようにした。判別を誤る原因となる雲や霧の影響も自動的に除外できるようにした。
新手法で画像を分析した結果、立山と涸沢東斜面では2009年の融雪が他の年よりも早かったが、他の3つの観測サイトでは差は認められないなど、融雪の年次変動や局地的な特徴が比較できた。植物の生育は山頂付近や地形の盛り上がった部分のハイマツから始まり、雪融けに伴って周辺の落葉性低木やササなどに広がっていく様子なども確認。生育期間が地形のわずかな違いによる雪融け順序の影響を受け、植物種によって大きく異なることなどが捉えられた。
同研究所は「融雪過程と植物の生育期間の空間分布を植生の群落や種レベルで示すことに初めて成功した。今後はカメラを増設して観測地域の拡大と長期観測を可能にし、温暖化の影響を評価していきたい」と話している。