水管理で水田からのメタン発生を削減
―「中干し」期間を延長し平均30%減に
:農業環境技術研究所

 (独)農業環境技術研究所は6月26日、地球温暖化の原因の一つである水田からのメタン発生について、水田の水を適切に管理することで平均30%減らせると発表した。イネの生育向上のために広く行われている田植え後の一時的な排水「中干し」の期間を、慣行の中干し日数(5日~14日)をさらに3日から1週間程度延長し、10日~22日間にすることがメタン削減に有効という。コメの収量にほとんど影響を与えずにメタンを削減できるため、低コストの温暖化対策になると期待している。

 

■メタン発生菌による稲わらなどの分解を抑制

 

 メタンは二酸化炭素(CO2)の21倍もの温暖化効果を持っているが、日本では人為的に排出されるメタンの約30%が水田から発生する。その要因の一つが、地力を向上させるために水田にすき込む稲わらなどの有機物。これを土中でメタン発生菌が分解し、メタン発生の原因になっている。
 同研究所は、このメタン発生菌の活動が、田植えから1カ月くらい後に行われる中干しによって抑制されることに注目。水のない中干し期間を延長すれば、土中に酸素が送り込まれやすくなってメタン発生菌の活動がより強く抑制されると考えた。
 そこで、8県の農業試験研究機関の協力を得て全国9カ所で2年間にわたって実証試験を進め、中干しの延長がメタンの発生やコメの収量にどう影響するのかを詳しく調べた。中干しの期間を0日(中干しをしない)から4週間まで変え、それぞれ水田からのメタン発生量やコメの収量、品質などを比較した。
 その結果、通常より中干しの期間を3日から2週間(平均6日間)延長するとメタン発生が14~58%(平均30%)減り、1週間程度の延長が最適であることがわかった。ただ、稲わらなど有機物をすき込んでいない水田では、削減効果はなかった。収量は14%減から10%増まで様々だったが、平均3%減でほとんど影響しないことが確認できた。コメの品質は、多くの地点で登熟歩合(籾に占める商品となるコメの割合)が向上し、タンパク質の含有量が減って向上したという。

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各調査地点の慣行・改良中干し日数

調査地点

慣行中干し日数

改良中干し日数

メタン
平均削減効果
(対慣行比 %)

山形(鶴岡)

11

22

63

山形(山形)

14

52

福島

14

21

66

新潟

14

21

66

愛知

13

85

岐阜

13

70

徳島

14

81

熊本

10

63

鹿児島

注) 15

85

注)鹿児島については間断灌水による削減効果

(提供:農業環境技術研究所)