ニホングリの渋皮のむけやすい遺伝子を発見
―DNAマーカーも開発、効率的な品種育成へ
:果樹研究所

 (独)農業・食品産業技術総合研究機構の果樹研究所は3月14日、ニホングリの新品種「ぽろたん」の渋皮のむけやすさの原因となる遺伝子を解明したと発表した。
 日本原産であるニホングリは、果実が大きいなど優れた特性を持っているが、従来の品種は渋皮がむけにくいために消費者から敬遠され、国内の出荷量はこの20年間に40%ほど減少した。
 クリの可食部分は種子の中に含まれる子葉で、子葉を包んでいるのが薄い茶色の「渋皮」、一番外側に茶色が濃くて堅い「鬼皮」がある。
 果樹研究所では、これまでクリの品種改良を続けており、2007年に「550-40」という品種と「丹沢」という品種を掛け合わせて新品種「ぽろたん」を開発した。新しく品種登録した「ぽろたん」は、渋皮がむけやすいという画期的な特徴を持っている。しかし、遺伝の仕方や遺伝子の由来などが不明であったために、どのような組み合わせで交配を行った場合に渋皮のむけやすいクリが得られるか分からず、品種の計画的な育成は困難であった。
 研究所では、遺伝の仕方などを探るためさらに品種間の交配を続け、渋皮のむけやすさを調べた。
 新品種は、親品種から受け継いだ遺伝子を持っている。その遺伝子が異なる状態の場合、形質として現れるものを優性遺伝子、現れないものを劣性遺伝子と呼んでいる。
 研究の結果、従来のニホングリの品種は、対立する遺伝子を持っているため渋皮がむけにくいのに対し、「ぽろたん」は、劣性遺伝子の組み合わせだけの状態で、渋皮がむけやすい形質が現れたことが分かった。
 また、この研究成果を利用して、育種に可能な、渋皮のむけやすさを判別できるDNA(デオキシリボ核酸)マーカーを開発した。クリは、種子をまいてから3年以上育てなければ果実を収穫できず、むけやすさも収穫後でなければ判別できなかった。このマーカーを利用することで、渋皮のむけやすさが種子をまく前に判別できるようになり、育成期間の短縮など効率的な品種育成が可能になると期待されている。

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「ぽろたん」は加熱すると渋皮まで簡単にむけるが、「筑波」は渋皮がむけにくい(提供:果樹研究所)