500keV大電流ビーム生成の新型電子銃を開発
―4月から加速器に組み込み実証試験
:高エネルギー加速器研究機構/日本原子力開発機構/広島大学など

 高エネルギー加速器研究機構は3月14日、(独)日本原子力開発機構などと共同で次世代放射光施設に欠かせない強力で細く絞りやすい高品質の大電流電子ビームを出せる電子銃「光陰極直流電子銃」を開発したと発表した。実験では、次世代放射光源に必要な高いエネルギーと電流値を持つ電子ビームの発生に世界に先駆けて成功した。新型電子銃は、開発中の加速器に組み込んで4月から実証試験を始め、次世代放射光源の実現を目指す。
 放射光は電子を光速近くまで加速したときに出てくるX線やガンマ線などの波長の短い強力な光。すでに円形加速器で電子を加速する放射光施設が、物質構造の解析や生命科学など先端的な研究に広く使われている。
 ただ、生体細胞の高分解能の画像化やナノ領域の物質構造解析などを可能にする、より高度な分析を実現するには、さらに強力な次世代放射光源が必要になる。このため、高エネ研は原子力開発機構や広島大学、名古屋大学と共同で「エネルギー回収型リニアック(ERL)」と呼ばれる超伝導線形加速器を用いる次世代放射光源の開発に取り組んでいる。
 開発した電子銃は、この線形加速器に組み込む電子ビーム源として開発を進めているもので、電子銃の性能として500keV(キロ電子ボルト)以上、電流値は1mA(ミリアンペア)以上が必要とされている。
 今回、電子を加速する電極間の距離を最適化するなど独自の工夫をすることで、500keVのエネルギーと最大2mAという大きな電流値を達成、地次世代放射光源実現に必要な電子銃の性能条件を上回った。
 研究グループは、今回の開発で「次世代放射光源の実現に一歩近づいた」としており、今後はさらに電源などを改造して500keV、10mAの電子ビーム実現に挑戦する計画だ。

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