分子性固体の光誘起相転移を理論的に解明
―物質の変化がスパコンによって計算可能に
:高エネルギー加速器研究機構/産業技術総合研究所

 高エネルギー加速器研究機構と(独)産業技術総合研究所の研究グループは3月12日、分子性固体の光誘起相転移を理論的に扱う新たな手法を生み出し、この手法を用いることにより、光によって絶縁体から金属状態に変化する分子性固体の相転移メカニズムを解明したと発表した。
 分子性固体は、有機分子が規則的に並んで結晶化した物質。研究チームが今回取り上げたのは(EDO-TFF)2PF6と名付けられた分子性固体で、高温では金属状態、低温では絶縁状態(電子が動かない凍結状態)になることが以前から知られていたが、近年、光によって絶縁体―金属状態の相転移が起こることもわかり注目されていた。
 この光誘起相転移は、100ピコ秒(ピコは1兆分の1)程度の極めて短時間の光パルスを当てることで生じ、その原因としては、光照射前は電荷の占める場所が凍結していて電気が流れないのに対し、照射すると電荷の場所が融解して一時的に電気が流れる状態になるためであることが実験的に確かめられている。しかし、そのメカニズムは理論的に解明されていなかった。
 研究チームは「自己無撞着環境場」という概念を導入することにより新しい理論計算の枠組みを開発することに成功、(EDO-TFF)2PF6に光を照射した当初に生じる変化がスーパーコンピュータで計算可能になったという。

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