(独)農業生物資源研究所は2月21日、岡山県農林水産総合研究センターなどとの共同研究で、2つの遺伝子(タンパク質)を植物に同時に導入することで病害抵抗性のある作物を作り出す新技術の開発に、世界で初めて成功したと発表した。 この研究には、(独)理化学研究所、京都府立大学、(独)農研機構野菜茶業研究所、玉川大学、筑波大学、京都大学なども参加し、共同研究を行った。 今回の研究では、岡山県農林水産総合研究センター生物科学研究所の研究グループが、新しく発見したシロイヌナズナ(アブラナ科)の2つの抵抗性遺伝子「RPS4」と「PRS1」を同時に農作物のナス科のトマト、タバコ、アブラナ科のナタネ、コマツナ、ウリ科のキュウリに導入し、作物の生産に甚大な影響を及ぼす青枯病(細菌)、斑葉細菌病(細菌)、炭疽病(カビ)に抵抗性のある作物の開発に世界で初めて成功した。 これまで植物の個々の抵抗性遺伝子は、それぞれ単独に機能し、病原体と1対1で対応すると考えられてきた。しかし、1つの抵抗性遺伝子を植物に導入しても、病害抵抗性を付与できない例が数多く報告されていた。また、抵抗性遺伝子は、植物分類の科、属、種を超えて機能しないことも報告されていた。 今回の研究で、2つの抵抗性遺伝子「RPS4」と「PRS1」を単独で植物に導入しても病害抵抗性を付与できないが、これらの遺伝子を同時に導入することで抵抗性が付与され、正常に生育することが明らかになった。こうした“遺伝子セット”で複数の病原体に対する病害抵抗性植物を開発できることが可能となった。この発見により、植物は少ない遺伝子を組み合わせることで多様な病原体を認識し、防禦系を発動していることが明らかになった。 また、シロイヌナズナ由来の二つの抵抗性遺伝子が、複数の植物種で機能したことから、共通のメカニズムにより植物の免疫が機能していると考えられるという。 今後、このメカニズムを明らかにすることにより、植物の免疫システムを活性化することで、病害を防除する新しい抵抗性誘導剤の開発に貢献できるとしている。 研究成果は、2月21日付け(日本時間)で米国オンライン科学誌「プロスワン」に掲載された。
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2つの遺伝子(タンパク質)を導入した植物での抵抗性発現の仕組み。病原体が感染時に放出する分泌タンパク質を、植物へ導入した2つのタンパク質「RPS4」と「RRS1」が認識し、防御応答する(提供:農業生物資源研究所) |
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