高エネルギー加速器研究機構と(独)日本原子力研究開発機構の共同運営組織であるJ-PARCセンターは1月16日、原子の構成粒子である中性子を用いる分析法で世界最高レベルの性能を達成した、と発表した。タンパク質などの生体高分子中の原子の動きを分析する際に重要な、エネルギー分解能の向上と測定ノイズを大幅に引き下げることに成功した。生体高分子の分子・原子レベルの運動を生体と同じ水溶液中で精度よく測定することが可能になり、生命現象の理解が飛躍的に進むと期待している。
成功したのは、同センター物質・生命科学実験施設に設置されている中性子実験施設の一つ「ダイナミクス解析装置」。陽子加速器から発生する中性子ビームをパルス状にする装置と、特定のエネルギーを持った中性子だけを取り出す結晶アナライザーと呼ぶ装置を独自に開発、世界最高レベルのエネルギー分解能を実現するとともに、計測の障害になるノイズを約10万分の1という、これまでになく低くすることに成功した。
エネルギー分解能が高いほど生体高分子中の原子の運動状態の小さな違いも識別できるが、今回は3.0μ電子ボルト(電子ボルトはエネルギーの大きさの単位)という高い分解能を達成した。この記録は、一般財団法人総合科学研究機構と共同で進めた実験で確認した。
今回の成果は、生体高分子だけでなく電池材料などの研究にも活用できるとして、J-PARCセンターは、今後ダイナミクス解析装置を広く民間企業や大学、研究機関などに利用してもらう計画。生命科学や物質科学の分野で世界をリードする研究成果が生まれると期待している。
No.2013-2
2013年1月14日~2013年1月20日