世界初、「免疫不全ブタ」の開発に成功
:農業生物資源研究所/プライムテック/理化学研究所

 (独)農業生物資源研究所は6月11日、プライムテック(株)、(独)理化学研究所と共同で免疫機能を持っていない「免疫不全ブタ」の開発に世界で初めて成功したと発表した。
 遺伝子組み換え技術の進展で、人間の生理現象や疾患を再現できるモデル動物が作れるようになり、その一つとして注目されているのが免疫不全動物の開発。免疫機能のない動物は、拒絶反応を起こさないため、個体間や異種間の細胞や組織の移植が可能になるからで、既に免疫不全マウスが開発されて人間の細胞や組織を移植する「Humanized mouse(ヒト化マウス)」の研究が始まっている。
 しかし、マウス以外の免疫不全動物作りには、まだどこも成功していない。
 ブタは、マウスよりも生理学的、解剖学的に人間との類似性が高いので、新開発の免疫不全ブタは抗体医薬品の開発や、再生医療におけるヒト培養細胞の長期安全性試験などに適していると農生研では見ている。
 免疫不全ブタは、体細胞(生殖細胞以外の細胞)から生物を再生する「体細胞クローン技術」と遺伝子組み換え技術を組み合わせて免疫に関係する遺伝子の機能を失わせることに成功したもの。
 体細胞クローン技術は、1996年にクローン羊の「ドリー」を誕生させたことで一気に研究が進み、その後、ヤギ、牛、マウスなどの体細胞クローンが作られ、農生研も2000年に体細胞クローンブタを開発している。
 免疫不全ブタの成功は、小動物のマウスのみで可能だった免疫不全動物の開発が大型動物の段階に入ったことを示すもので、「Humanized pig(ヒト化ブタ)」の開発を目指したいと同研究所はいっている。

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免疫不全のクーロンブタ(提供:農業生物資源研究所)