ミトコンドリアDNAの突然変異で糖尿病など発症へ
―抗酸化剤が発症阻止に効果
:筑波大学

 筑波大学の林純一教授らは6月12日、ミトコンドリアDNA(デオキシリボ核酸)の突然変異がリンパ腫や糖尿病の原因となることをマウスによる実験で突き止めたと発表した。活性酸素(ROS)を過剰に産生する病原性突然変異がミトコンドリアDNAに生じると、糖尿病などの老化関連疾患が誘発されるというもので、抗酸化剤を投与すると発症が抑えられることも判明したという。
 ミトコンドリアは、生命活動に必要なエネルギーを作っている細胞内の小器官で、細胞の核にあるDNAとは別にミトコンドリア独自のDNA(mtDNA)を持っている。活動エネルギーは、食物から得た栄養分と呼吸で取り入れた酸素とを用いた酸素呼吸によって生み出しているが、この酸素呼吸を低下させる突然変異がmtDNAに起こるとエネルギー欠乏により生命活動に重篤な影響が現れることが知られている。さらに、こうした突然変異の蓄積は、老化や老化関連疾患の原因になると推察されてきたが、詳細は不明だった。
 林教授らは今回、酸素呼吸活性低下の突然変異を持つマウスと、酸素呼吸活性低下に加え、活性酸素を発生させる突然変異を併せ持つマウスを作製、それと正常マウスの3種類のマウスを対象に寿命や病態発生を調査、比較した。
 その結果、寿命は3種類とも差はなく、突然変異の導入による老化の促進は見られなかったが、2つの突然変異を併せ持つマウスに糖尿病の発症が認められた。また、死んだマウスを解剖したところ、同じく2つの突然変異を導入したマウスにだけリンパ腫が高頻度で発症していたことが判明した。抗酸化剤を投与することでこれらの発症を抑制できることも分かったという。
 これらの結果から、ヒトの類似の症例にも抗酸化剤投与が有効な予防治療法になることが期待できるとしている。

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