気象庁の気象研究所は4月6日、同月2日から3日にかけて、日本海で急速に発達し、台風並みの暴風雨となって各地に災害をもたらした“爆弾低気圧”の成因を発表した。
気象研究所が、客観解析データや数値モデルの再現結果などから調査・解析したところ、2日午後9時に黄海上にあったこの低気圧の中心気圧は、1,006hPa(ヘクトパスカル)から3日午後9時には964hPaと、24時間に42hPaも低下した。
春季に日本海からオホーツク海にかけて低気圧が急速に発達することはたびたびあり、中心の気圧が24時間に24hPa以上下がると爆弾低気圧と呼ばれるが、今回の気圧の低下量は過去の研究例からみても飛びぬけて大きなもので、非常に稀な事例であった。
気象研究所によると、南からの暖気と、この時期としては強い北からの寒気がぶつかり、両方が混じり合う中で、冷たい空気の下降と暖かい空気の上昇で強い上昇気流が生まれた。下層には、東シナ海から対馬海峡に流れ込んだ大量の水蒸気が低気圧に供給され、発達した。上空では、東に進んだ気圧の谷が低気圧に接近していた。この低気圧は、発達するにしたがって熱帯低気圧に類似した構造を持つようになった。この構造の変化も、強風をもたらした要因の一つという。
低気圧の西側では、通常は高度9,000mから1万2,000m付近に存在する「対流圏界面」(対流圏と成層圏の境界)が5,500m付近まで大きく下降、低気圧の東側では、水蒸気が凝結して水や氷になる際に放出する強い潜熱(凝結熱)によって大気は暖められ、加熱と対流によって対流圏界面が持ちあげられていた。このため、低気圧の上空では、対流圏界面の傾斜が非常に急になり、強い上昇気流が引き起こされていた。
こうしたことから、この低気圧の急発達は、低気圧と対流圏界面付近の気圧の谷との相互作用と、南からの水蒸気供給が、大きく影響していたことが分かった。
No.2012-14
2012年4月2日~2012年4月8日