筑波大学と(独)物質・材料研究機構は4月4日、有機太陽電池の高効率化に道を開く新しい動作原理を見つけたと発表した。有機太陽電池は、光の照射で有機分子から飛び出した電子が別の有機分子に移動することで発電するが、今回初めて電子の受け手側の分子に光が吸収されても電子の移動が起きることを突き止めた。2種類の分子に異なる波長帯の光を吸収させれば、さまざまな波長域の光を含む太陽光を無駄なく使えることから、有機太陽電池を高効率化する有力な手がかりになると期待している。
新現象は、筑波大・数理物質系の守友浩教授と物材機構・太陽光発電材料ユニットの安田剛主任研究員の研究グループが突き止めた。
有機太陽電池は、フレキシブルで自由な形にしやすいほか低コストという特徴を持つ一方で、現在主流のシリコン太陽電池に比べると発電効率(光発電効率)が低く、劣化しやすいという難点がある。今回、研究対象にしたのは、有機太陽電池の中でも実験室レベルで最高8.4%の発電効率を達成しているバルクヘテロジャンクション型。電子を出すドナー分子と電子を受け取るアクセプター分子がnm(ナノメートル、1nmは10億分の1m)レベルで接合した構造を持つ。
実験では、高い発電効率で注目されている「PTB7」と呼ばれる有機分子をドナーに、「PC70BM」呼ばれる有機分子をアクセプターにする組み合わせについて調べた。光照射によってこれらの分子内で電子がどのように生成・吸収されるかをフェムト(1千兆分の1)秒単位で分析した。
その結果、電子の移動はドナーに光が照射されたときだけでなく、アクセプターでも起きることが分かった。これによって、例えばドナーとして可視光から近赤外領域を、アクセプターとして紫外領域の光をそれぞれ吸収しやすい有機材料を選択すれば、太陽光のさまざまな波長域の光を無駄なく利用でき、有機太陽電池の高効率化が可能となる。
今回の成果について、研究グループは「新しいタイプの太陽電池の設計が可能になる」として、今後さらに有機太陽電池の効率や劣化のメカニズムを解明し、高効率有機太陽電池の実現を目指すとしている。
No.2012-14
2012年4月2日~2012年4月8日