(独)産業技術総合研究所は4月6日、温度一定の室温で加熱しないでも、紫外線を照射するだけで液化し、これに可視光を照射すれば固化を何回も繰り返してできる新材料を開発したと発表した。この材料は、骨格となる糖アルコールに複数のアゾベンゼン基を結合させた液晶性の光反応性材料。 加熱や冷却なしの室温下、光照射だけで液化-固化の変化を繰り返せる物質はこれまで無く、これが初めて。 産総研は、室温で結晶状態から光照射で溶融、加熱することで固体に戻る材料を既に開発しているが、今回は室温で液化-固化の可逆的変化を光だけで行うことに挑戦。入手が簡単な糖アルコールを基本骨格に、光反応性のアゾベンゼン基を複数個結合させた化合物で可逆的な光液化と光固化が可能なことを見つけた。 実験では、合成した新材料に波長365nm(ナノメートル、1nmは10億分の1m)の紫外線を照射すると、色を変えながら次第に液化、最終的には完全に液化した。この液体に波長510nmの可視光を当てると、最初の色に戻りながら固化が起こり、光による液化と固化は何度でも繰り返し行うことができた。糖アルコールとしては水酸基の数が違う数種類のものが試されたが、アゾベンゼンの置換基数が4以上の場合だけが光液化した。 開発された新しい光反応性材料の特徴は、液化-固化の変化を波長の違う光の照射だけで制御できることにある。産総研は、この特徴を生かし、繰り返して接着脱着できる光反応接着劑など、これまで無かった幅広い応用分野開発を進めたい、としている。
詳しくはこちら
|
 |
紫外線を照射すると固体粉末(左)がとけて液体となり(中)、光を当てると再度固まる(右)(提供:産業技術総合研究所) |
|