(独)宇宙航空研究開発機構は12月1日、超高速インターネット衛星「きずな」を使った遠隔医療の実証実験に成功したと発表した。小笠原村診療所(東京・小笠原島)と都立広尾病院(東京・渋谷区)を衛星の高速通信で結び、同診療所で撮ったレントゲンや内視鏡のハイビジョン映像を伝送しながらTV会議で専門医の支援を受ける模擬遠隔医療を試みた。実験に参加した医師は、「内視鏡の映像を実際に小笠原で見ているのと同じ画質で見ることができる」、「専門外の処置をする際にリアルタイムで専門医の指導が仰げるのは助かる」などと話しており、医師不足に悩む離島や山間部などでの遠隔医療に「きずな」を利用した超高速衛星通信が有効であることが確認できたという。 実験では、模擬患者を使って小笠原村診療所から診断に必要なハイビジョン映像を伝送、広尾病院がそれに基づいてアドバイスや治療の優先度を判断・指示するなど、5つのケースについて実験した。この結果、頭蓋内出血のため本土へ搬送できないような重症患者のケースで、経験の浅い医師でもハイビジョン映像を通じた専門医の指示や指導を受けて適切な救急救命処置ができることなどが確認できたという。 「きずな」は、教育や医療、災害対策、高度道路交通システムなど各分野で必要な高速通信技術を実証するために2008年2月に打ち上げられた静止衛星。今回の実験は、「きずな」の通信容量のうち、小笠原村診療所と都立広尾病院を結ぶ既存回線の375倍に相当する通信容量を割り当てて実施した。 詳しくはこちら |  |
小笠原村診療所から「きずな」経由で都立広尾病院に送られてきた画像を使っての遠隔医療実証実験の様子(提供:宇宙航空研究開発機構) |
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