産業技術総合研究所は12月1日、シリコン(ケイ素)を使わない有機系太陽電池の一つである色素増感型太陽電池の対極材をこれまでの白金に代えて多層カーボンチューブ(MWNT)などで構成した3元系材料で作る手法を開発したと発表した。特性も白金とほぼ同程度であることを確認済み。作製プロセスも簡便で色素増感型太陽電池の低コスト化、大面積化への貢献が期待される。 色素増感型太陽電池は、透明電極の付いたガラス基板上に二酸化チタンの多孔質膜を作製し、その膜に色素を吸着させた後、白金がコーティングされたガラス基板を対極として、ガラス基板間の隙間に電解液を注入し、封をして太陽電池セルとしている。しかし、レアメタルの白金は、近年、自動車触媒や燃料電池向けに世界の需要が急増、金より高くなり、省資源とコスト低減のため、白金に代わる対極材料の開発が求められている。 そこで産総研の研究グループは、導電性に優れ、大量合成も可能なカーボンナノチューブに注目、MWNTを用いた研究開発に取り組んだ。MWNT単体は、粉末状なため成形が難しく、何かの基材高分子に分散させないと太陽電池用対極を形成できない。研究グループは、これまでの研究開発成果を活用、MWNTを分散させた高分子を作製、太陽電池対極材料にすることを試みた。 最初、室温でも液体のイミダソール系と呼ぶイオン液体とMWNTを混ぜた2元系材料を作り、対極に用いたら、光電変換効率が白金に及ばなかった。そこで、2元系材料を導電性高分子のポリスチレンスルホニウム水溶液に混合、超音波で分散させ、遠心分離して3元系導電性材料にしたところ、分散性、成形性が大きく向上。その3元系材料で作った対極は、変換効率や電流密度などの特性で白金電極とほぼ同じ値が得られた。 産総研では、今後、対極材料としては大面積化を検討、さらに対極材料以外の応用も考えて積極的に製品化を進め、来年度のベンチャー創業を目指すとしている。 詳しくはこちら |