(独)物質・材料研究機構は11月29日、広島大学と共同でノートパソコンや電子書籍など携帯端末の軽量化やフレキシブル化に欠かせないプラスチック基板を用いて、世界最高性能の有機トランジスタを作る技術を開発したと発表した。
新技術は、溶液状の有機半導体材料を基板上に垂らして溶媒蒸気に曝(さら)すだけという簡単なもの。有機分子同士が自発的に重なって結晶を作る自己組織化を利用した。高価な真空容器なしに空気中で作成できるため、低価格化が可能なロール式連続プロセスも適用でき、有機エレクトロニクスの本格的な実用化に大きく貢献すると期待している。
開発したのは、同機構・国際ナノアーキテクト研究拠点の塚越一仁主任研究者と広島大学の瀧宮和男教授らのグループ。
実験では、低分子の有機半導体材料と絶縁体ポリマーの2種類の分子材料を溶媒に溶かし、基板上に垂らした。基板を回転させて混合溶液を薄膜状にすると2種類の材料は自然に分離し、絶縁体ポリマー薄膜の上に有機半導体材料の薄膜ができる。これに溶媒蒸気を短時間当てたところ、有機半導体の薄膜は、大きさ数百μm(マイクロメートル、1μmは100万分の1m)の結晶で構成された有機半導体薄膜になり、トランジスタ性能の指標である電界効果移動度が従来の溶液法の9倍以上になった。溶液法による有機トランジスタとしては、世界最高性能という。
従来法では、小さな半導体結晶がいくつもでき、それらの界面(結晶粒界)が伝導度を低下させる原因となっていた。これに対し新製法では、有機分子の自己組織化を最大限引き出し結晶を大きく成長させたため、結晶粒界が小さくなって高い移動度を実現できたという。
No.2010-47
2010年11月29日~2010年12月5日