光を当てると溶ける新有機材料を開発
:産業技術総合研究所

 (独)産業技術総合研究所は12月2日、熱を加えずに光を照射するだけで固体から液体に変化する新規な有機材料を開発したと発表した。半導体の微細加工などに用いられている感光性樹脂とは違い、何度でも元の状態に可逆的に戻るという特徴がある。再利用可能な感光材をはじめ、さまざまな用途開拓が期待できるという。
 開発した新規の物質は、アゾベンゼンという分子が環状に連結した構造の有機化合物。アゾベンゼンは、紫外光を照射すると分子の並び方がトランス体という構造からシス体という構造に変化し、シス体に可視光を照射するか、あるいは熱を加えるとトランス体に戻る特性がある。
 物質を構成する原子の並び方が光の照射で変化するこうした現象は、光異性化というが、溶液中(液体状態)でだけ起き、結晶中(固体状態)ではほとんど起きないとされてきた。
 研究グループは、いくつかのアゾベンゼンが環状に連結していて、アゾベンゼン部位の光異性化に伴って分子全体の形状が大きく変化する化合物を2種類作り出し、その性質を調べた。実験の結果、これらの化合物に光を照射すると、固体と液体の中間である液晶状態から液体に変化すると共に、結晶から液体に変化することを見つけた。結晶中で光異性化反応が起き、その反応によって結晶中の分子配列の秩序性が乱れ、固体が液体状態に変化したという。
 固体から液体への状態変化が光異性化反応で起きることを確認したのは、これが世界初。研究チームは今後、こうした現象が起きるメカニズムの解明を進めると共に、新規物質の大量合成法を開発し、再利用可能な特性を生かした応用分野の開拓を目指したいとしている。

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