(独)産業技術総合研究所は11月13日、発酵で得られる濃度1%程度の希薄なブタノール(ブチルアルコール)水溶液から80%以上に濃縮したブタノールを、従来の半分以下の消費エネルギーで回収できる省エネ型のバイオブタノール精製技術を開発したと発表した。エタノールに継ぐ次世代バイオ液体燃料として期待されるブタノール利用の可能性を開く成果という。 バイオブタノールは、木材などのバイオマス(生物量)を原料として生産できる再生可能なアルコール燃料の一種。エタノールに比べ発熱量が高いことからその活用が期待されているが、発酵によって生産されるブタノールは濃度が薄く、しかも濃縮度が80%以下の範囲だと脱水工程が複雑になり、効率よく安価に生産することが難しかった。 産総研の研究チームは、水をよくはじき、アルコールを吸着するシリカライト(人工ゼオライト)膜に着目し、これにシリコーンゴムをコーティングした分離膜を作製した。この分離膜の片側を真空にし、膜を透過してきたアルコールを冷却して回収する、いわゆる浸透気化法を適用し、高効率なバイオブタノール精製技術の開発に成功した。 実験の結果、発酵で得られた1%前後のブタノール水溶液から濃度82%にまで濃縮された、水分が均一に混ざった高濃度ブタノールを回収できたという。これまで試みられてきたシリコーンゴム分離膜を用いる方法だと濃縮度は37%まで、シリカライト粉末含有シリコーンゴム分離膜を用いる方法も53%止まりだった。濃度80%以下の状態から水を完全に取り除く脱水・無水化には、複雑なシステムを要したが、新分離法だとシステムがシンプルになり、脱水の工程を入れても無水ブタノール生産にかかる全エネルギーはブタノールの持つエネルギーの約13%。これは、シリコーンゴム分離膜を用いた場合に比べ70%少なく、シリカライト粉末含有シリコーンゴム分離膜を用いた場合に比べて50%少ないという。 産総研は今後、産業界と連携して実用的サイズの分離膜製法の確立を図り、バイオブタノール生産技術の早期実現を目指したいとしている。 詳しくはこちら |