(独)産業技術総合研究所は11月8日、三井金属鉱業(株)と共同で1,400℃の急激な温度変化を繰り返しても強度がほとんど劣化しない耐熱衝撃性の窒化ケイ素系セラミックスを開発したと発表した。1,200℃の高温下でも室温と同程度の強度を保持する高い耐熱性も持つ。 鉄やアルミニウムの鍛造プロセスでは、二酸化炭素(CO2)排出の抑制に役立つ耐熱性と耐熱衝撃性に優れた材料が求められている。しかし、従来の窒化ケイ素系セラミックスは、1,000℃の温度変化でも劣化したり、大型で複雑な形状の部品の作成が困難などの問題があった。同研究所は、これらの問題が解決できるとして、今後より過酷な使用条件でも使える大型部品の作成技術に取り組み、実用化を図りたいとしている。 セラミックスの耐熱衝撃性を高めるには、熱膨張係数や弾性率の低減、熱伝導率の向上などが試みられている。ただ、これらを個々に実現するだけでは、1,200℃を超える高い耐熱衝撃性は実現できなかった。 今回は、窒化ケイ素の結晶粒を焼き固める際の焼結助剤として酸化イッテルビウムを用いて結晶粒界の熱伝導率を高めたほか、熱衝撃時に生じる応力を緩和する窒化ホウ素の添加や焼結条件の最適化などによって、熱伝導率の向上や弾性率の低減などが実現できた。 セラミックスは、大型化すると小試験片で得られた特性が出ず、実用化する上で壁になることが多い。新耐熱セラミックスは、焼結条件を最適化することで直径82mm、長さ370mmの比較的大型の部品にしても試験片と同様の特性が得られ、製品形状に近い部品を作ることができるという。
詳しくはこちら |  |
新開発の窒化ケイ素系セラミックスで試作した金属溶湯用管状部材。直径は82mm、長さは370mm(提供:産業技術総合研究所) |
|