(独)物質・材料研究機構は10月28日、太陽誘電(株)と共同で、携帯端末に欠かせない内臓アンテナの大型化などを可能にする新しい材料技術を開発したと発表した。携帯端末のディスプレー面に使われている透明電極に大容量通信に必要な高周波に対応できる金属並みの特性を持たせることに成功、大型アンテナなどの高周波素子をディスプレー面に設置する道を拓いた。同機構は、新材料の動作の基本原理は実証できたとして、今後はマイクロ波やミリ波帯で動作する透明アンテナの試作に取り組み、より実用に近い高周波素子の検討を急ぎたいとしている。
新技術は、酸化物透明電極と金属配線を組み合わせたハイブリッド技術。これまでの透明電極は、伝導性が金属の100分の1程度と低く、高周波材料として使うことは難しかったが、新技術では金属を目に見えないほど微細な線状にして透明電極と組み合わせることで、透明性を保ったまま金属並みの高い伝導性を実現した。これにより、携帯電話をはじめとする無線デジタル通信に用いられるギガヘルツ帯の高周波に対して高い伝送特性が確認できたという。
携帯端末は、大容量通信に対応する高周波化と共に多機能化が進み、小さなスペースにより多くの電子部品を詰め込む必要が出てきている。研究チームは、携帯端末のディスプレー面が大型化してきていることに着目、そこを設置スペースとして活用できないかと考えた。特にアンテナは、大きさが電波の受信感度を左右するが、今回の成果によってアンテナが透明化できるので、大面積化が進むディスプレー面により大きなアンテナが搭載できると期待している。
No.2010-42
2010年10月25日~2010年10月31日