(独)物質・材料研究機構は10月27日、(株)双葉電子工業と共同で、六方晶窒化ホウ素(hBN)とカソード(熱フィラメント)を組み合わせた新しい方式の遠紫外線発光デバイスを開発、殺菌試験の結果、殺菌効果を確認したと発表した。 遠紫外線発光デバイスは、光触媒による環境汚染物質の分解処理法の光源や病院・食品加工・上下水道の殺菌用光源など幅広い分野での利用が期待されている。 現在、その遠紫外線発光デバイスには、主に水銀ランプが利用されているが、水銀が漏洩した時に環境や人体に影響を及ぼすことから、水銀の使用は「RoHS指令」(欧州連合(EU)が2006年7月に施行した電子・電気機器に含まれる有害物質の規制)などで規制されている。このため、水銀ランプを利用した遠紫外線発光デバイスに代わる新しい方式の遠紫外線発光デバイスが求められている。 物材機構と双葉電子は、熱力学的にも化学的にも安定しているhBNに着目して共同研究を行い、2009年9月に高輝度遠紫外線発光デバイスを開発した。 今回の研究では、hBNの結晶性の改善とデバイスの構造の変更により、紫外線強度の向上を実現、殺菌デバイスとしての可能性を確認した。 遠紫外線発光デバイスの発光材料には、物材機構で作製したhBNを使用した。また、カソードは、双葉電子の表示デバイス用平面カソードの使用で大面積での均一な発光が可能となった。この方式(カソード ルミネッセンス方式)は、発光材料を変更することで、可視光領域からX線領域まで幅広いエネルギー帯の光を放出できることが特徴である。 黄色ぶどう球菌を用いて新しい遠紫外線発光デバイスの殺菌試験を行った結果、60秒間の紫外線照射で、99.99%以上殺菌できることが確認された。この試験結果により、hBNを用いた遠紫外線発光デバイスが、水銀ランプに代わる殺菌デバイスになり得る可能性を見出すことができた。 今後は、殺菌能力のさらなるアップに努め、発光材料の特性やデバイス構造の改善により、遠紫外線強度の向上と発光面の大面積化を進め、殺菌用水銀ランプの代わりとなる「水銀レス・面発光タイプ」の遠紫外線発光デバイスの実現を目指すことにしている。 詳しくはこちら |  |
新遠紫外線発光デバイスの発光状態。発光面積は12mm×20mm(提供:物質・材料研究機構) |
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