(独)産業技術総合研究所は10月25日、酸化チタンの大手メーカー石原産業と共同で、電気自動車などのリチウムイオン二次電池用の高性能な負極材料を開発したと発表した。これまでのチタン酸リチウムに比べて充放電の容量が約30%向上する上、リチウムを使用しないためコスト的に有利などの特徴があり、電動車両用のリチウムイオン二次電池の高容量化、長寿命化、低コスト化が期待できるという。
開発した新材料は、水素を含むチタン酸化物(H2Ti12O25)。チタン酸リチウムと同程度の約1.55Vの電圧を持ち、酸化物1g当たりの充放電容量はチタン酸リチウムを約30%上回る225mAh(ミリアンペア時)と高容量。含有する水素が水素結合によって骨格構造を形成しているので構造的に安定で、構成元素としてリチウムを含まないことからリチウムの節約になる。
現在負極材料には、黒鉛系炭素材料が最も一般的に使われているが、炭素材料は60℃以上の高温環境下で長時間使用すると容量が低下するといった問題があり、電気自動車やハイブリッド車向けには炭素材料より安全性が高く長寿命化が可能なチタン酸リチウムへの置き換えが試みられている。
しかし、チタン酸リチウムの場合、軽くて十分な電力を取り出せるかどうかの指標であるエネルギー密度が低いという課題がある。また、反応に寄与しない余分なリチウムを含有しているため、リチウムイオン電池の大型化や普及に伴ってリチウムの使用量が大幅に増加し、コストの上昇につながることが危惧されている。
新材料は、チタン酸リチウムと同程度の高い電圧を持ち、高い安全性が期待され、さらにチタン酸リチウムに比べて高容量であることから、車載用などに期待されているエネルギー密度の高い電池が作れるという。
今後共同研究チームは、実用化に向けて化学組成、結晶構造、粉体特性の最適化や入出力特性の改善などを進める。また、石原産業から電池メーカーをはじめとして産業界へサンプル提供するとしている。
No.2010-42
2010年10月25日~2010年10月31日