(独)物質・材料研究機構は10月26日、世界最小の強誘電体を開発したと発表した。
強誘電体は、絶縁体の一種。メモリー材料として注目され、高速書き換えができ、電源を切っても記憶内容が消えない、消費電力が少ない、などから微細化できればユビキタス社会を支える「究極のメモリー」になると期待されている。
今回の成果は、その「究極のメモリー」に向けての大きな壁であった微細化を実現したもので、子供の積み木遊びのように厚みがnm(ナノメートル、1nmは10億分の1m)オーダーのナノ薄膜(ナノシート)を積み重ねて世界最小の強誘電体を作った。この研究は、(独)科学技術振興機構が推進している研究課題「無機ナノシートを用いた次世代エレクトロニクス用ナノ材料・製造プロセスの開発」の一環で行った。
積み木では、ブロックを積み重ねて遊ぶが、同機構が開発したのはブロックに替えてニオブ酸カルシウムとニオブ酸ランタンという2種類のナノシートを交互に基板上に積み重ね、強誘電体のナノシートに仕上げるというもの。ニオブ酸カルシウムとニオブ酸ランタンの水溶液を作り、基板を両溶液に交互に漬けて厚さが1~2nmの分子レベルのナノシートを形成すると共に、プラスに帯電した分子を糊にして上下のナノシート同士をつなぎ合わせて強誘電体化し、それを繰り返して積み木のように積層、世界最小レベルの膜厚10nmの強誘電体を得ることに成功した。
同機構は、「膜厚10nmの極薄膜ながら、室温で優れた強誘電性を示すことを確認した」といっている。
今回の成果は、ナノ物質の組み合わせで強誘電体ができることを証明した初めての例であり、低消費電力メモリーやIC(集積回路)カードなどへの応用展開が期待される。
No.2010-42
2010年10月25日~2010年10月31日