(独)防災科学技術研究所と東京大学地震研究所は7月7日、日本列島の地殻の底に沈み込むプレート(岩板)の表面が地下深部ではがれて陸側プレートの底面にくっつく「底付け作用」という現象が進行していることを確認したと発表した。プレート境界で起こる大地震のメカニズムを理解する上で重要な成果という。
海洋プレートの最表層には、海底堆積物でできた未固結堆積層があり、その下に海底火山から噴出した火山性粉砕物や火山岩でできた「VCR層」と呼ばれる地殻最上部がある。海洋プレートが陸の下に潜り込むときに、まず海溝付近の浅部で海底堆積物層がはがれて陸のプレートの下部に付加される。この現象を「はぎとり付加」と呼び、深さ10㎞以上の深部でVCR層がはがれて陸のプレートの底部に付加される現象を「底付け作用」と呼んでいる。
深部におけるこの底付け現象は、これまで地表の地質調査などから間接的にしか示されていなかったが、両研究所の研究グループは今回フィリピン海プレートが沈み込んでいる房総半島(千葉)沖を対象に、人工地震反射波で地下構造を探る反射法構造探査データや、過去24年間に房総沖で観測された約2,000個の地震波形データなどを詳しく分析、波形の類似した「相似地震」と呼ばれる一群の地震発生がVCR層の底部に分布していることを見出した。
相似地震は、現在の活動的なプレート境界を表していることから、相似地震がVCR層の底に分布することはVCR層が現在底付けされていることを示しているという。
海洋プレートの潜り込みによる日本列島の地殻の成長が現在進行中の現象として深部でとらえられたのは、これが初めて。研究グループは、プレート境界の活動の理解に役立つとしている。
この成果は、7月9日付の米国の科学誌「サイエンス」電子版に掲載された。
No.2010-26
2010年7月5日~2010年7月11日