(独)農業・食品産業技術総合研究機構と岡山大学は7月6日、シロアリの女王アリが分泌するフェロモンの成分が「2-メチル1-ブタノール」と「n-ブチルn-ブチレート」という2種類の揮発性物質で構成されていることを世界で初めて特定したと発表した。
フェロモンは、動物や微生物が分泌する生理活性物質。性的興奮を誘発させる性フェロモンのほか、いくつかの種類がある。シロアリの女王アリが分泌する女王フェロモンは、巣の中にいる他のシロアリが女王アリになるのを抑制する働きがあり、その存在は半世紀以上前から知られていた。
しかし、化学分析に十分な数の女王アリの採取が難しかったことなどから、実体のつかめない“幻のフェロモン”としてこれまでその成分は未解明の状態が続いていた。
岡山大学大学院環境学研究科・松浦健二准教授らの研究グループは、成熟した女王アリの大量採取が可能なヤマトシロアリに的を絞り、その女王アリ200匹を容器に入れて飼育し、回収した揮発成分のガスクロマトグラフィー質量分析法による化学分析と、実際の女王フェロモンの生物活性試験から化学成分の特定に成功した。
併せて、同定した2つの揮発性物質2-メチル1-ブタノールとn-ブチルn-ブチレートからなる人工フェロモンを作り、これによって女王不在の巣に新たな女王が出現することを阻止することにも成功した。
シロアリの駆除では、駆除後に生き残った働きアリの女王化による巣の再出現を防がないとならないが、「今回の研究成果により、その問題を解決することが可能になった」と同機構は見ている。
この研究成果の詳細は、米国科学アカデミー紀要に掲載された。
No.2010-26
2010年7月5日~2010年7月11日