(独)宇宙航空研究開発機構(JAXA)や国立天文台などが加わる国際研究チームは5月19日、JAXAが打ち上げた太陽観測衛星「ひので」と、米国航空宇宙局(NASA)の太陽観測衛星「RHESSI」が同時観測に成功した最大規模(Xクラス)の太陽フレアの解析を行い、太陽フレア発見後150年来の謎とされてきた太陽フレアの白色光の起源が、高速に加速された電子によるものであることを明らかにしたと発表した。
太陽フレアとは、太陽の表面付近のコロナから出るX線や彩層(太陽表面とコロナの間にある太陽の光球を取り巻く希薄な太陽大気の層)から出るスペクトル線(各色に分かれた光の帯)を通じて主に観測される太陽系最大の爆発現象のこと。特に太陽フレアでは、白色光、つまり人間の目で見える光でも爆発に伴う増光が観測されることがあり、「白色フレア」と呼ばれている。
太陽フレアでの白色光発光現象は、太陽フレアが1859年に発見された当初から知られていたが、稀に起こる現象であるために観測例が少なく、その発生メカニズムは発見から現在に至るまで約150年にわたって不明のままであった。
2006年12月14日の世界時(地球の自転に基づいて決められる世界共通の時刻)22時9分に発生したXクラスの太陽フレアでは、「ひので」衛星の可視光磁場望遠鏡によって白色光が観測された。それと同時刻にNASAの「RHESSI」衛星によって硬X線が観測され、これらの画像を比較研究することが可能になった。
解析の結果、「RHESSI」衛星がとらえた硬X線、すなわちフレアによって高速に加速された電子の存在場所や時間変動などのふるまいが、「ひので」衛星がとらえた白色光のそれと極めてよく一致していた。また、40K電子ボルト(光速の約40%)以上に加速された電子すべてが持つエネルギーが、白色光の発光に必要なエネルギーに匹敵していた。この発見は、太陽フレアによって高速に加速された電子が、白色光の起源であることを示している。
この研究成果は、米国の学術雑誌「アストロフィジカル・ジャーナル」の5月20日号に掲載された。
No.2010-19
2010年5月17日~2010年5月23日