我が国初の金星探査機「あかつき」の打ち上げに成功
:宇宙航空研究開発機構/三菱重工業

 (独)宇宙航空研究開発機構(JAXA)と三菱重工業(株)は5月21日、我が国初の金星探査機「あかつき」(PLANET-C)と、5機の副衛星を載せた「H-ⅡA」ロケット17号機を同日午前6時28分過ぎ、同機構の種子島宇宙センター(鹿児島・種子島)から打ち上げ、約27分半後の「あかつき」分離に前後して全衛星の打ち上げに成功したと発表した。
 「あかつき」は、今年12月上旬頃に金星周辺に到着、金星から約300~約8万kmの長円軌道を周回しながら約2年にわたって金星の気候などを観測する。
 金星は、直径が地球の約95%、質量が同約90%で、地球に最も近い“兄弟星”と言える惑星で、「明けの明星」とか「宵の明星」と呼ばれ、日本人には馴染み深い天体。しかし、その環境は、地球とは大きく異なり、二酸化炭素の厚い大気に覆われ、表面温度は約460℃で、硫酸の雨が降り、「スーパーローテーション」と呼ばれる自転速度の約60倍の秒速100mの暴風が吹いている。この金星大気全体の動きを調べ、金星の気候の成り立ちを解明するのが「あかつき」の目的。
 「あかつき」は、縦・横・高さが約1m×約1.5m×1.4mの箱形で、上下に太陽電池のパドルを付け、打ち上げ時の質量は約500kg。搭載する観測機器は、紫外線から中間赤外線までそれぞれ捉える波長域の異なるカメラ5台と、探査機から電波を発射して地球に届いた時の周波数や強度の変化から金星大気温度の高度分布などを調べるための信号源の計6台。5台のカメラの中には、雷放電に伴う発光や化学的発光を観測するカメラもある。
 「あかつき」打ち上げに相乗りした副衛星でユニークなのが“宇宙ヨット”とも呼べる小型ソーラー電力セイル実証機「IKAROS(イカロス)」。打ち上げ時は、折り畳まれているが、宇宙で展開すれば一辺14mの大きな四角形の帆になる。この帆で風ならぬ太陽の光の圧力を受けて推進する。帆は、アルミニウム蒸着のポリイミド樹脂で、厚さは髪の毛の太さの10分の1。帆の一部には、薄膜太陽電池が貼ってあり、発電の実証も行う。
 このソーラーセイルのアイデアは、100年ほど前からあり、SF(サイエンス・フィクション)にも登場しているが、実際に使われるのは今回が世界初。
 残る4機の相乗り衛星は、大学コンソーシアムや国立・私立の大学が開発した重さ1kgあまりから20kgまでの小型衛星。その中で最も大きな大学宇宙工学コンソーシアムの「UNITEC-1 」は、宇宙用コンピューターの耐宇宙環境性能実証などを行う。
 また、鹿児島大学の「KSAT」は、集中豪雨予測を目指した大気水蒸気分布観測実験などを行う。早稲田大学の「WASEDA-SAT2」は、展開パドルによる姿勢制御の実証など計画しており、創価大学の衛星は子供たちの夢を載せ、打ち上げ3週間後に夜空の流れ星となる。

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上昇する「H-ⅡA」ロケット17号機(提供:宇宙航空研究開発機構/三菱重工業)