(独)国立科学博物館は9月15日、野生絶滅種の水生植物「コシガヤホシクサ」約1万株が最後の自生地だった茨城県下妻市の農業用貯水池、砂沼(さぬま)で開花したと発表した。 動物では絶滅したトキやコウノトリなどの野生復帰が有名だが、植物の野生絶滅種の野生復帰の成功例はまだない。今回の成果は、コシガヤホシクサの野生復帰に向けた大きな前進で、「植物の野生復帰に関するモデルケースとして貴重なデータを与えてくれるもの」と同博物館は見ている。 コシガヤホシクサは、ため池や岸辺などで生育する、春に種子から発芽して秋に枯れる一年草。1938年に埼玉県の越谷(こしがや、現在の越谷市)で発見され、その後絶滅したと見られていたが、1975年になって下妻市で野性しているのが見つかった。しかし、それも束の間、1994年に野生種は絶滅した。 このため、コシガヤホシクサは、栽培保存された個体が生き残るのみの状態となってしまい、同館の筑波実験植物園が2008年度から環境省の「生息域外保全モデル事業」としてコシガヤホシクサの野生復帰を目指す保全研究に取り組んでいる。 絶滅前の砂沼のコシガヤホシクサの個体数は、数万あるいは数十万以上と推測されていることから、今回開花個体数が1万株に達したことは野生復帰に大きく近づいたと関係者は今後のさらなる展開を期待している。
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開花したコシガヤホシクサ。9月9日の様子(提供:国立科学博物館)
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