(独)森林総合研究所は9月15日、小笠原諸島の無人島・西島で、外来種のクマネズミを根絶状態にしたところ、小笠原固有の陸鳥「ハシナガウグイス」と、同じく陸鳥の「トラツグミ」の定着が確認されたと発表した。クマネズミの駆除により短期間で陸鳥の生息回復が認められたのは、日本で初めて。世界自然遺産に登録された小笠原の外来種対策と鳥類回復に弾みが付きそうだと同研究所は見ている。 ハシナガウグイスは、小笠原諸島に生息しているウグイスの固有亜種で、体が小さくくちばしが長く、本州のウグイスが一夫多妻であるのに対し一夫一妻などの特徴がある。父島や母島などには生息しているが、クマネズミ駆除前の西島にはいなかった。 クマネズミは、国際自然保護連合(IUCN)の「世界の侵略的外来種ワースト100」にランキングされている種で、主に植物の種子を食べるが、海鳥や陸産貝類を捕食するなど肉食化することが知られている。しかし、陸鳥の生態に及ぼしている影響について確かなことは分かっていなかった。 そこで、森林総研は陸鳥への影響などを明らかにするため、クマネズミ駆除前の2005年から駆除後の今年にかけて鳥類観察調査を実施していた。駆除は、(財)自然環境研究センターと共に開発した殺鼠剤による効率的な手法を用いて行い、2007年春に西島のクマネズミを根絶寸前まで追い込んだ。2009年に少数目撃されたが、2010年に実施した環境省による再度の駆除後は生息が確認されていない。 観察調査の結果、西島の陸鳥は駆除前にはメジロとイソヒヨドリの2種だけだったが、2009年6月からハシナガウグイスが継続的に観察されるようになり、2010年6月からはトラツグミも観察されるようになったという。 駆除後ごく短期間で陸鳥が定着したことについて森林総研は、クマネズミが陸鳥の卵やヒナなどを捕食するという被害がなくなったためではないかと推測、これを確かめるためクマネズミが生息する母島でウズラの卵を入れた人工巣を樹木上に設置し観察したところ、夜間にクマネズミが捕食する姿が捉えられたという。 今回の発見は、クマネズミ根絶が陸鳥の回復につながることを示している。絶滅危惧種の「オガサワラカワラヒワ」(固有亜種)も個体数を増やせる可能性があり、希少鳥類の増加が小笠原諸島本来の鳥類相の回復につながることが期待できるとしている。
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小笠原諸島西島の森林で生息回復が確認された「ハシナガウグイス」(提供:森林総合研究所) |
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