植物の傷修復に必要な遺伝子を発見
:筑波大学/帝京大学

 筑波大学は9月13日、病虫害や風などによって傷ついた植物がその傷を自分で修復する際に必要とする遺伝子を帝京大学と共同で発見したと発表した。茎にできた傷の上部と下部でそれぞれ別の遺伝子が働き、周辺の細胞分裂を促して傷を修復していることが分かった。傷の自己修復は、接ぎ木などを可能にする植物の性質で、今回の成果によりこれまで難しいとされてきた植物種や異種間での接ぎ木などに道が開けると期待している。
 発見したのは、筑波大生命環境科学研究科の佐藤忍教授と帝京大理工学部の朝比奈雅志助教の研究チーム。研究に用いたのは、アブラナ科の一年草植物であるシロイヌナズナ。
 実験では、シロイヌナズナの茎を半分まで切断しても、茎の中心部にある組織「髄」の細胞分裂が3日後に始まり、約1週間で傷の上下の組織が結合することが分かった。さらに佐藤教授らは、この時に芽で合成されるオーキシンと呼ばれる植物ホルモンがせき止められて傷の上部に溜まる一方、傷の下部では枯渇、傷の上部と下部でそれぞれ「ANAC071」と「RAP2.6L」という遺伝子の働きが誘導されることを突き止めた。また、これらの遺伝子の働きは、それぞれエチレンとジャスモン酸という傷害ホルモンによっても誘導され、細胞分裂を活発化して傷を治すことが分かった。
 植物組織の再生には、傷の上下で細胞分裂が起こることが重要だが、これまではどんなメカニズムで傷の周りの細胞分裂が活発化するかは分かっていなかった。

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