(独)農業・食品産業技術総合研究機構の野菜茶業研究所は8月29日、(独)理化学研究所、岡山県農林水産総合センターとの共同研究で、アブラナ科の野菜「ハクサイ」のゲノム(全遺伝情報)の塩基配列を初めて解析し、タンパク質をコードする遺伝子を特定(同定)することに成功したと発表した。
ハクサイは、植物で初めてゲノムを解読されたモデル植物の「シロイヌナズナ」と同じアブラナ科に属する作物で、シロイヌナズナで得た知識などを作物研究へ応用展開する際に起点となる植物として注目されている。
今回、共同研究グループは、中国、英国、韓国などの国際ハクサイゲノム解読プロジェクトと連携し、アブラナ科の作物では初めてとなるハクサイのゲノムを解析し、タンパク質をつくる遺伝子を特定することに成功した。
国際ハクサイゲノム解読プロジェクトは、ハクサイ研究の標準化系統の品種である「Ghiifu-401」から収集したゲノムのDNA(デオキシリボ核酸)を、「全ゲノムショットガン法」という方法を活用して、全ゲノムの塩基配列の約55.1%に相当するゲノム塩基配列を解読した。この結果を基にコンピューターシミュレーションを行ったところ、ハクサイには約4万種の遺伝子があることが分かった。
農研機構などの共同研究グループは、この約4万種の遺伝子を、独自に日本で収集した約1万種のハクサイの完全長cDNA(相補的DNA)の塩基配列と比較し、実際にハクサイのゲノムの配列中でタンパク質を作る(コードする)有用な遺伝子を特定することに成功した。
その結果、ハクサイとシロイヌナズナの遺伝子配列には、高い類似性が見られることが分かり、シロイヌナズナですでに蓄積、公開されている約2万6千個の遺伝子の位置や機能情報がハクサイでも利用可能となった。
今回の研究成果により、今後シロイヌナズナの情報から作物への応用展開を進めることで、作物からの有用遺伝子分離や品種改良のスピードなどがますます加速するものと期待される。
この研究成果は、科学誌「Nature Genetics」のオンライン版(8月28日付)に掲載された。
No.2011-35
2011年8月29日~2011年9月4日