世界初、電力増幅作用持つダイヤモンドトランジスタを作製
:産業技術総合研究所

 (独)産業技術総合研究所は9月2日、世界で初めて電力増幅作用を持つダイヤモンドトランジスタを作製したと発表した。省エネルギー型の次世代ダイヤモンドパワーデバイスの開発に道を開く成果という。
 電圧や電流、周波数の制御、変換などに用いるいわゆる電力用のパワーデバイスの高性能化に向け、絶縁耐圧、熱伝導率などに優れたシリコンカーバイドや窒化ガリウムがシリコンに代わる新しい半導体材料として用いられつつある。
 ダイヤモンドは、これらの新材料よりもさらに絶縁耐圧や熱伝導率に優れ、高い電圧をかけても壊れない、発熱を効率的に逃すことができる、といった利点があり、革新的な省エネ超低損失パワーデバイスの創出が期待されている。しかし、ダイヤモンドは、電気抵抗が非常に大きく、大電流を流すことができないことがパワーデバイスへの応用の難点になっていた。
 産総研の研究チームはこれまでに、不純物元素のホウ素やリンをダイヤモンドに高濃度に混入する技術や、ホッピング伝導と呼ばれる電気伝導機構を利用したダイヤモンドの電気抵抗抑制技術を開発している。今回、これらの技術をもとに大量の不純物を添加し、しかも欠陥の発生を極力抑えた低抵抗ダイヤモンド薄膜を開発、これを用い、デバイス構造を工夫することによってバイポーラ型(電子の多いn層と、正孔の多いp層を交互に重ねた型)トランジスタを作製した。
 このトランジスタの電力増幅を測定したところ、ベース電流の変化に対するコレクター電流の変化は10倍程度となり、電流増幅率が10を超えることを確認した。ダイヤモンド製バイポーラトランジスタの製作例はこれまでにもあるが、有意な電力増幅が確認された例は無かった。
 今回の成果は、ダイヤモンド製高性能パワーデバイスの実現に一歩踏み出したもので、研究チームは今後、電流密度を増やすなどし、さらに特性を向上させたいとしている。

詳しくはこちら

ダイヤモンドトランジスタの実物写真(提供:産業技術総合研究所)