高エネルギー加速器研究機構は8月24日、宇宙誕生時のビッグバン(大爆発)より前に起きたとされる宇宙の急激な加速膨張「インフレーション」の証拠を見つけるために南米チリに国際協力で設置した観測装置が世界トップレベルの検出感度を持つことを確認したと発表した。 宇宙からやってくる特殊な電波をとらえる装置で、これまでトップだった南極の装置と肩を並べたという。現在さらに検出器を増強した装置による観測も進めており、その結果が出れば世界トップに立って宇宙誕生のナゾ解明に大きく貢献できると期待している。 今回の成果は、日米欧を中心とする世界7か国の研究機関が参加する「QUIET実験」の一環。高エネ研からも6人の研究者が加わっている。 実験の目的は、宇宙のあらゆる方向から降り注ぐ微弱な電波「背景放射」の中から、電波の偏光(波の振動方向)が天空の大きな範囲で見たとき渦状パターンを示す「Bモード」と呼ばれる現象をとらえること。それには、高感度の偏光計を備えた電波望遠鏡が必要だが、Bモードの存在が確認できれば、宇宙でインフレーションが実際に起きた証拠となる。このため、南極に装置を設置したチームなど、世界の複数の研究グループが激しい競争を繰り広げている。 宇宙は、誕生時にビッグバンと呼ばれる大爆発を起こしたが、現在の宇宙論ではそれよりさらに前の1兆分の1秒の、そのまた1兆分の1秒の、さらに1兆分の1秒という短い時間にアメーバが銀河になるほどの急激な加速膨張を起こしたとされている。このインフレーションに伴う時空の振動で原始重力波が発生、その痕跡が背景放射のBモードに刻まれていると考えられている。
詳しくはこちら
|
 |
南米チリの高度5,000mを越す高地に設置された「QUIET」の望遠鏡(提供:高エネルギー加速器研究機構) |
|