(独)産業技術総合研究所は8月24日、安価な顔料であるプルシアンブルーを利用し、様々な用途に使用できる各種セシウム吸着材を、大日精化工業(株)、関東化学(株)と共同で開発したと発表した。東京電力福島第一原子力発電所から放出された放射性セシウムで汚染された土や水などの浄化をはじめ、農作物の放射性セシウムの吸収抑制などに役立つという。 セシウム吸着剤としては、天然鉱物のゼオライトなどがあるが、青色の人工合成顔料であるプルシアンブルーも高いセシウム吸着能力を備えた物質で、大量、安価に生産されており、即時に調達しやすいなどの優れた面がある。 プルシアンブルーは、水に溶けないことから産総研は今回、水に分散する粒径約10nm(ナノメートル、1nmは10億分の1m)のナノ粒子を独自に開発、これと市販品の顔料とを適切に使い分けし、用途に合わせて使用できる各種セシウム吸着剤を作り出した。ナノ粒子は、粒径が小さく比表面積が大きいので高い吸着効率が期待できるという。 開発したのは、高濃度汚染水の処理に適した無機ビーズ、低濃度汚染水処理に適した着色綿布と不織布、土壌散布に適したナノ粒子分散液、畑や水田に適した紺青(こんじょう、プルシアンブルーの一種)分散液。 紺青と無機材料を混ぜて作った無機ビーズは、耐放射線性が高いため高濃度汚染水の処理に向き、浄水器やカラムなどに充填し、通水する使用法が想定されている。 プルシアンブルーで染色した綿布は、放射性セシウム吸着後焼却処理すれば綿布が灰になるので廃棄物の減容になる。この着色綿布をカラムに充填し擬似河川水でセシウム吸着能力を評価したところ、通水量が一定量を超えない範囲内でセシウム濃度は通水前の約1,000分の1になり、1.81gの着色綿布のセシウム吸着量はセシウム137換算で20G(ギガ、1Gは10億)ベクレルに相当したという。 紺青分散液は、農作物のセシウム吸収阻害を目的に福島県内の水田と畑に散布済みで、農作物の収穫後に効果を評価する予定という。 産総研は、今後各種吸着剤の実証試験を進めると共に、関連企業と連携し大規模面積に展開できる体制を整えたいとしている。
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新セシウム吸着剤の一種、紺青分散液(提供:産業技術総合研究所) |
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