(独)宇宙航空研究開発機構(JAXA)は8月25日、地球から39億光年離れた巨大ブラックホールに星が吸い込まれる瞬間を、JAXAや理化学研究所、米国のペンシルベニア州立大学などの国際共同観測チームが世界で初めて観測したと発表した。
今年3月28日21時57分(日本時間)に、米国のガンマ線バースト観測衛星「スウィフト(Swift)」に搭載されているガンマ線バースト検出望遠鏡によって、「りゅう座」の方向にある天体から突然強いX線を検出した。この天体は、その後もさらに強いX線放射を繰り返したことから、重い星の死とブラックホールの誕生に伴ってしばしば観測される宇宙最大の爆発といわれるガンマ線バーストとは異なるものと考えられた。
ペンシルベニア州立大学の「スウィフト」観測チームから連絡を受けて、日本の全天X線監視装置(MAXI:マキシ)の観測チームが、この天体の観測データを調べたところ、MAXIでも「スウィフト」による発見の数時間前から強いX線を検出していたことが分かった。さらに過去に遡って調べたところ、今回の活動が始まるまではこの天体からX線は放射されていなかったことが確認された。
MAXIは、地上約400kmの上空にある国際宇宙ステーション(ISS)の日本実験棟「きぼう」の船外プラットフオームに2009年7月に取り付けられ、同年8月以降、全天の天体からのX線を常時観測してきた装置で、JAXA、理化学研究所、東京工業大学、日本大学などの研究者が観測チームに参加している。MAXIチームは、観測開始直後から米国の「スウィフト」チームと緊密に連携とり、観測の運用を行ってきた。
MAXIチームと「スウィフト」チームの観測を解析した結果、このX線の正体は、銀河の中心核にあるブラックホールに、星が吸い込まれた瞬間を捉えたものと判明した。また、X線の強さと激しい変動の様子から、X線を放射しているのは、光速に近いガスが噴き出る「ジェット」と呼ばれる現象であることが初めて確認された。今までX線を出したことのない銀河の中心核が、急に強く活動を始めるところを捉えたのは、今回が世界でも初めて。
この研究成果は、8月25日発行のイギリスの科学誌「ネイチャー」オンライン版に掲載された。
No.2011-34
2011年8月22日~2011年8月28日