(独)産業技術総合研究所は7月13日、大面積の有機半導体単結晶薄膜を作る新しいインクジェット印刷法を開発し、その技術を用いて世界最高性能の有機薄膜トランジスタの試作に成功したと発表した。有機半導体を溶かしたインクの液滴と、有機半導体結晶化を促すインクの液滴を別々のノズルから交互に吹き付けて印刷するダブルショット・インクジェット印刷法という印刷技術を使うのが特徴。
プラスチックシートにトランジスタなどの電子デバイス類を印刷技術で形成するプリンタブルエレクトロニクス技術は、軽くて薄く、落としても壊れないフレキシブルな情報通信端末の実現に向けた近未来技術として期待されている。この技術の重要なポイントは、シートに印刷法で塗ったミクロな液滴から、均質性の高い半導体層を如何に形成するかにかかっているが、通常の印刷技術ではそれが極めて難しかった。
今回、産総研が開発した手法では、有機半導体を溶かした半導体インクと半導体の結晶化を促すインクを別々のインクジェットから吹き付ける。最初に半導体結晶化インクを吹き付けてから半導体インクを重ねて吹き付けるという方式。得られる半導体単結晶薄膜の厚さは、30~100nm(ナノメートル、1nmは10億分の1m)。均質で極めて平滑な薄膜が得られる。作った薄膜の単結晶性は、高エネルギー加速器研究機構のシンクロトロン放射光で確認した。
更に、この有機半導体単結晶薄膜上に電界効果型の薄膜トランジスタ(TFT)を作製したところ、そのデバイス性能(電子移動度)は従来の印刷法で作った有機TFTの100倍以上あり、有機TFTとして世界最高の性能を示した。
No.2011-28
2011年7月11日~2011年7月17日