(独)産業技術総合研究所は7月11日、高温で溶けた材料の屈折率を測定する装置を、(株)サーモ理工、ジェー・エー・ウーラム・ジャパン(株)、東京工業大学と共同で開発したと発表した。レーザーによる溶解で情報を書き換える光ディスクの設計や金属精錬プロセスの精密制御への貢献が期待できるという。 高温で溶融した状態の材料の把握は、製造プロセスや性能評価などに重要だが、その一つである屈折率データの取得は非常に難しく、これまでは特定の材料について十分熟練した人が特殊な装置を使って測るという、限定された条件下での測定しかできなかった。 開発した装置は、石英製容器(石英セル)に真空封入した材料を赤外線で加熱し、容器底部から分光エリプソメーターと呼ばれる光学特性測定装置で屈折率を測定するというもの。赤外線による加熱は、2kwの強力な赤外線ランプから放出される赤外線を回転楕円ミラーで集光し、石英ロッドを通して石英セル内の試料部分に導く構成になっている。溶融試料の底部平坦面に光を当てて屈折率を測る分光エリプソメーターは、極めて高感度で、表面の原子一層分の屈折率を測れるものを用いている。 新装置は、簡便に屈折率が測れるのが大きな特徴で、サーモ理工社の赤外線加熱技術、ウーラム社の分光エリプソメーター技術、産総研と東工大による高温溶融材料の封じ込め技術を融合して開発した。 高温溶融状態の屈折率データは、たとえば精錬プロセスでは放射温度計の校正に使われている。また、書き換え型光ディスクでは、記録・再生の際、薄膜を構成する材料をレーザー光の照射で溶融、急冷するというプロセスがあり、レーザー光にどのように応答するかを決定するために屈折率の値が必要とされている。開発された装置を使えばこれらのデータを容易に取得できる。 共同開発チームは、今後装置を小型化すると共に、より使いやすくして2年後に実用化したいとしている。
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新開発の屈折率測定装置(提供:産業技術総合研究所) |
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