世界最高性能のナノ誘電体膜を開発
:物質・材料研究機構

 (独)物質・材料研究機構は7月14日、厚みが1nm(ナノメートル、 1nmは10億分の1m)という分子レベルのナノ結晶(ナノシート)の化学組成と構造を自由自在に制御する精密ドーピング技術を開発し、その技術を使って厚さがナノレベルの世界最高性能の誘電体膜を作ることに成功したと発表した。
 誘電体とは、電圧をかけると、その電圧に応じて電荷を蓄える性質や、直流電圧に対しては電気を通さない性質(絶縁性)を持つ材料をいう。
 誘電体などの電子材料には、その特性などを高めるためドーピングと呼ばれる不純物(ドーパント)を注入する処理が行われる。しかし、従来の手法では、ドーパントをナノ結晶の望みの位置に注入し、特性を制御することは非常に難しく、まだ確立した技術は実現していない。
 今回の研究では、チタン・ニオブ層状酸化物と呼ばれる酸化物セラミックスを材料物質として用いた。層状酸化物とは、酸化物層が薄く積み重なった物質をいう。
 研究では、セラミックスを作製する一般的な手法である固相反応法により、チタンとニオブの金属比を系統的に変化させたチタン・ニオブ層状酸化物セラミックスを作った。さらに、独自に開発したナノシート化技術を用いて、層状酸化物を層一枚一枚ずつ剥離し、厚み1nm、横サイズ約5μm(マイクロメートル、1μmは100万分の1m)のナノシートを作製した。新ナノシートは、層状酸化物のチタン・ニオブ比をそのまま反映した組成を持っており、精密なドーピングに成功した。
 さらに、その化学組成と構造の精密制御により、誘電特性の自在な制御が実現し、ニオブを約30%置換したナノシートでは、膜厚5~10nmレベルの薄膜で世界最高の誘電率320を達成した。
 この研究成果によって、誘電体素子のさらなる小型化と大容量化が可能となり、次世代の大容量コンデンサー素子やメモリー(記憶)素子の開発に向けての新しい道が開けた。
 この研究は、(独)科学技術振興機構の戦略的創造研究推進事業チーム型研究の研究課題「無機ナノシートを用いた次世代エレクトロニクス用ナノ材料/ 製造プロセスの開発」の一環として行われた。

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