(独)産業技術総合研究所は7月6日、軽量、低コスト、折り曲げ可能などとして注目される有機太陽電池の高効率化を実現する有力な技術を開発したと発表した。
新技術は、光を照射した時に有機材料内部の電子状態がどのように変化していくかなど、太陽電池としての性能を左右する光発電プロセス全体を理論的にシミュレーションする手法。有機系材料は、太陽電池として広く使われているシリコン系材料とは比較にならないほど多種多様で、有機太陽電池を高効率化するには材料内部の光発電メカニズムを正しく理解して最適の材料を分子レベルで設計することが重要とされている。
新技術は、同研究所ナノシステム研究部門が米・独の研究者の協力を得て開発したもので、光を照射した時の材料内部の電子や原子の振る舞いを理論的に計算して時間的な変化を追いかけることができる。同研究所は、電子を他の分子に与えやすい分子としてテトラチアフルバレン(TTF)を、受け取りやすい分子としてテトラシアノキノジメタン(TCQN)を選び、これらが結合した材料の光起電力を計算した。その結果、この材料は、赤橙色の光と紫外光を照射した時に起電力が生じ、太陽電池材料として応用できる可能性があることが分かったという。
同研究所は、今後、光起電力発生の際に生じる有機分子の構造変化が分子の破壊につながるかなどをシミュレーションする技術の開発を進め、有機太陽電池の寿命に関する情報も得られるようにしたいとしている。
No.2011-27
2011年7月4日~2011年7月10日