(独)産業技術総合研究所は7月4日、(株)ノリタケカンパニーリミテド、(株)不二製作所、和光純薬工業(株)と共同で、固定砥粒方式という技術でスライスした多結晶シリコン基板の表面反射率を抑える技術を開発したと発表した。量産にも適した方法であり、多結晶シリコン太陽電池の低価格化に役立つという。
太陽電池の普及に向けてさまざまな低コスト化が試みられている。その一つとして、結晶シリコンインゴット(塊)から薄い基板を切り出すスライス技術を、現在の遊離砥粒方式から固定砥粒方式へと移行することが進められている。
遊離砥粒方式は砥粒を含むスラリー(けん濁液)とピアノ線とを組み合わせて切断するが、固定砥粒方式はピアノ線にダイヤモンド砥粒を固着させたワイヤーと冷却水を用いてスライスする。遊離砥粒方式に比べてスライス時間が約3分の1と短く、廃液処理の負担が少ない、廃ワイヤー量を削減できる、などの利点がある。半面、固定砥粒方式でスライスした多結晶シリコン基板の表面は、凹凸の少ない鏡面に近い状態になることなどから、表面を最適な凹凸状態にする表面テクスチャー構造の形成が難しいという問題があった。
産総研と3社は今回、固定砥粒方式でスライスした多結晶シリコン基板の表面反射率を低減でき、かつ安価で量産に向いた表面テクスチャー形成法を開発した。
新技術は、圧搾空気で砥粒を吹き付けるサンドブラスト処理と、酸エッチング(酸による腐食処理)を組み合わせたもので、まず砥粒を含んだ空気を基板に吹きつけ、表面に凹凸をつける。砥粒の種類や吹き付け方を工夫することで表面の形状を制御できる。次に、その基板を新たに開発した酸エッチング液に浸漬して、サンドブラスト処理で生じたダメージ層の除去と基板の表面テクスチャー形成とを同時に行う。
酸エッチング処理後の基板表面反射率を、サンドブラスト処理をしたものとしなかったものとの間で比較テストしたところ、処理した基板の反射率は低く、新技術が太陽電池製作に適していることを確認できたという。
研究チームは、今回開発した技術をさらに詰め、量産プロセスを検証し実用化したいとしている。
No.2011-27
2011年7月4日~2011年7月10日