(独)産業技術総合研究所は7月6日、中国の一部地域からしか産出しないレアアース(希土類元素)の一種「ジスプロシウム」を使わずに高性能磁石を作る新技術を開発したと発表した。 高性能磁石は、携帯電話をはじめ各種のハイテク製品に使われ、今後更に電気自動車のモーターなど利用が増えるものと見られている。 現在、最も高性能な磁石は、ジスプロシウムを含むネオジム・鉄・ホウ素(Nd-Fe-B)系磁石だが、ジスプロシウムは中国の一部の鉱床からしか採掘されていない。 このため、ジスプロシウムを使わないサマリウム・鉄・窒素(Sm-Fe-N)系磁石が注目されているが、性能を落とさずに焼き固めることが難しいため、粉末状の磁石を焼結ではなく樹脂などで固めたボンド磁石しか製品化されていない。 産総研は、その期待のSm-Fe-N系磁石の粉末をプレスによる加圧とパルス電流を流して加熱するパルス通電焼結法の組み合わせで焼き固め、高性能で高密度な焼結体を得ることに成功したもの。400℃以下の低い焼結温度で密度90%以上の緻密な焼結体が作れる。 磁石の性能の指標である最大エネルギー積は、焼結前の粉末磁石の約88%を記録している。 新技術で得られるSm-Fe-N系磁石の焼結体は、Nd-Fe-B系磁石より耐熱性や耐酸化性に優れることから、高温・多湿の環境下用高性能磁石などが今後開発されるものと期待される。
詳しくはこちら
|