(独)物質・材料研究機構は7月6日、粒径がnm(ナノメートル、1nmは10億分の1m)サイズの二酸化チタン(TiO2)をその粒径のまま、結晶構造の異なる還元型チタン酸化物「Ti2O3」に変えることに成功したと発表した。
チタンの還元型酸化物Ti2O3は、電子伝導性や可視光吸収などの特性があることが知られており、nmサイズにまで超微粒化できれば太陽電池や燃料電池などへの幅広い応用が期待できる。
還元型チタン酸化物、たとえばTi3O3、Ti4O7は、二酸化チタンの最大のメリットである耐食性(腐食に対する抵抗性)を持ちながら可視光領域で光を吸収することから、光化学反応や光電気化学反応を利用する際の有効な材料と考えられている。また、還元型チタン酸化物は、電子伝導性にも優れ、高効率な太陽電池の電極材料や電子伝導材料としての応用が期待されている。
しかし、これまでの熱合成法で直接的に還元型チタン酸化物を得るには、通常800~1100℃という高温での加熱が必要で、原料物質がnmサイズであっても熱で粒子が成長してしまうため、nmサイズの還元型チタン酸化物を得ることはできなかった。
今回の研究では、ルチル型二酸化チタンのnm粒子を、低温においても強い還元力を示す水素化カルシウム粉末と共に混合し、従来の還元温度より格段に低い350℃での反応によって、世界で初めて原料物質のナノ粒子と同じ大きさの均一で高品質な還元型チタン酸化物を合成することに成功した。
この新しい手法は、原料物質と還元剤を混合し、ガラス管に封入し、最後に加熱するだけの極めて簡便で安価なプロセスによって、高機能かつ均一なnmオーダーのナノ酸化物を製造するもので、今後、人工光合成や貴金属代替材料の開発など幅広い分野での材料合成へと大きく発展する可能性のある革新的な成果と期待される。
この研究成果の論文は、ドイツ化学会の国際誌「Angewante Chemie International Edition」に掲載された。
No.2011-27
2011年7月4日~2011年7月10日