(独)農業環境技術研究所は6月22日、つくばみらい市(茨城)内の水田で大気中の二酸化炭素(CO2)濃度を200ppm(1ppmは100万分の1)高めてイネの栽培実験を実施したところ、収量は16%増加したものの、整った米粒の割合を示す整粒率は17ポイント低下し、多数の未熟粒が発生したと発表した。将来予想される高温・高CO2環境での品質の維持・向上に向けた取り組みが重要としている。
CO2濃度が現在より約200ppm高い584ppmの大気環境は、ほぼ50年後に想定されている大気状態に当る。同研究所のチームは、屋外の水田にCO2を放出するチューブを正八角形状に設置し、風向きに応じてCO2放出を制御しながら八角形区画内を一定濃度に保つ「開放系大気CO2増加(FACE)実験施設」を作って2010年に調査した。
1998~2008年に寒冷地の岩手県雫石町で実施したFACE実験では、CO2濃度の上昇は光合成を促進し、イネの収量の増加につながるという結果を得たが、今回はイネ成育期間中の平均気温が雫石町より約5℃高い、より温暖な地域での影響を調べるのが狙い。
実験の結果、収量の増加については雫石町のFACE実験とほぼ同様だったが、品質の重要な指標である整粒率は17ポイント下落、その主因は白未熟粒の多発だった。白未熟粒は、白濁した部分を持つ米粒で、乳白粒、基部未熟粒、腹白未熟粒、背白未熟粒があり、いずれも等級格落ちの要因になる。白未熟粒の多発は、冷涼な雫石では見られなかった現象であった。高CO2濃度条件では、玄米たんぱく質含有率が低下する。それに加えて、群落内の気温が高く推移したことなどにより、白未熟粒の発生が増加し、整粒率が大きく低下したと同研究所では見ている。
FACE実験は、白未熟粒の発生条件の解明にも役立つことから、今後も実験を継続し、高CO2濃度、高温環境化において被害を低減させる栽培管理技術や高温耐性品種の開発に役立てたいとしている。
No.2011-25
2011年6月20日~2011年6月26日