(独)産業技術総合研究所は6月20日、ステンレス製の金属箔を基板に用いた高効率フレキシブルCIGS太陽電池を(株)富士フイルムと共同で開発したと発表した。光電変換効率が高いCIGS太陽電池の大面積化、低コスト化に道を開く成果で、今後、関連企業各社と連携して実用技術の開発を進め、事業化につなげたいとしている。 CIGS太陽電池は、銅(Cu)、インジウム(In)、ガリウム(Ga)、セレン(Se)から成る化合物半導体を光吸収層に使った薄膜型の太陽電池。経年劣化がなく長期間の信頼性に優れる、集積化などで高い光電変換効率が得られる、軽くてフレキシブルな太陽電池が作れる、などの特徴があり、近年パネル型モジュールの商品化が進んでいる。 産総研は、これまでチタン箔やモリブデン箔、セラミックスシートを基板材料として用い、1枚の基板上に複数の太陽電池を直列に接続する集積型構造や、光電変換効率が向上するアルカリ効果を引き出すアルカリ制御技術などを開発してきた。研究チームは今回、これらの成果を基に安価なステンレス材料の利用に挑戦し、基板に金属材料を用いることの難点を克服する技術などの開発に成功した。 ひとつは、金属成分のCIGS層への拡散防止。金属を基板に用いると太陽電池の高温成膜時にその成分がCIGSに拡散し、性能が落ちるという問題がある。また、集積型にするためには絶縁層の形成も必要となる。そこで研究チームは、ステンレス箔の上にアルミニウム層を形成し、表面を陽極酸化法によって酸化アルミニウムに変化させた。酸化アルミニウム層は、電気的な絶縁層であるが、同時に、金属基板成分のCIGS層への拡散を妨げる障壁層としても働くことが認められた。 もうひとつは、アルカリ効果。ナトリウムなどのアルカリ金属を添加すると、CIGS太陽電池では光電変換効率が向上することが知られている。ソーダ石灰ガラスを基板に用いる場合はこれが自然に実現するが、フレキシブル基板などの場合には高精度のアルカリ制御技術が必要になる。今回、酸化アルミニウム層の上に、厚さを制御した極薄のケイ酸塩ガラス層を形成することで高精度に制御されたアルカリ添加を行い、アルカリ効果による高性能化を実現した。 これらの技術を用い、1枚の基板上に16個の細長い短冊状の太陽電池が直列接続された10cm角の集積型フレキシブルCIGS太陽電池サブモジュールを作製した。性能試験したところ、光電変換効率15.0%という結果を得た。これは、フレキシブルではないCIGS太陽電池と比べても遜色のない性能であり、軽くて曲げられるという機能性を併せ持った高性能で低コストな太陽電池を作れる見通しが得られたという。今後は、フレキシブル性を生かした応用技術や生産技術などの開発も進め、実用化を目指したいとしている。 詳しくはこちら |  |
新開発の高効率フレキシブルCIGS太陽電池。これで大きさは、10cm角(提供:産業技術総合研究所) |
|