(独)宇宙航空研究開発機構(JAXA)と三菱電機(株)は5月16日、GPS(全地球測位システム)の補完を目指して昨年9月に打ち上げた準天頂衛星「みちびき」による東京都心部での測位実証実験の結果を発表した。GPSと「みちびき」を組み合わせると、測位衛星をキャッチしにくい都心部での測位率を大幅に改善でき、カーナビ機能の高度化や高精度なGPS測量の対象領域拡大などに役立つことが確認できたという。
GPSによる衛星測位は、高層ビルや街路樹など、GPSからの電波を遮るものが多い都心部では測位が困難になったり、測位精度が落ちたりするといった弱点がある。カーナビでは、GPS測位のこうした弱点をジャイロスコープなどで補っているが、「みちびき」は日本の真上からGPSと同等の測位信号を送信することで、GPSそのものを補完する効果がある。
今回の実験は、「みちびき」からの信号を受信できる測位端末を高精度GPS計測車両に搭載、高層ビルが立ち並ぶ新宿(東京)と、細い街路が多い銀座(同)を対象に、カーナビで用いられている1周波による測位精度10m程度の一般測位と、測量などに使用されている2周波による測位精度2~3㎝程度の高精度測位の2通りの測位について、測位率改善の実証実験を行った。
その結果、一般測位では、GPS単独の場合の測位率は新宿28.5%、銀座39.5%なのに対し、「みちびき」を組み合わせた場合には新宿70.0%、銀座69.1%と大幅に改善、また高精度測位では、GPS単独の場合、新宿8.8%、銀座16.2%なのに対し、組み合わせた場合、新宿35.4%、銀座33.2%と、測位率が2~4倍高まることを確認した。
測位衛星システムは、カーナビだけでなく、地図作りや建築向け測量、子供や高齢者の見守りサービス、農業機械の自動制御、地震や火山の検知など、応用分野が急速に広がっている。準天頂衛星を組み合わせた今回の実験で、これらの精度向上や新たな応用分野開拓などの可能性が示されたことになる。三菱電機は、これまで実現が困難であった右折左折車線などを識別するレーンナビゲーションや安全運転支援のための車間制御などのサービスへの活用を視野に入れている。ただ、準天頂衛星1基だけでは、8時間しか日本上空をカバーできないため、初号機の「みちびき」に続いて最低2機の打ち上げが必要とされている。