(独)宇宙航空研究開発機構(JAXA)は5月19日、超音速機が音速を超えるときに発する衝撃音(ソニックブーム)を半減させる技術の実証実験に成功したと発表した。スウェーデン宇宙公社の協力を得て、高度20~30kmに打ち上げた気球から試験機体を超音速で落下させ、設計技術の有効性を確認した。
衝撃音の低減技術は、超音速旅客機実現の最重要課題の一つとされているが、同機構は今回得られたデータがその実現に大きく貢献するとして、11月に国際民間航空機関(ICAO)超音速タスクグループで報告する。
音速を超える瞬間、超音速機の前方と後方で何かが爆発したような衝撃音が聞こえるが、この音を波形にするとN字型になる。今回用いた試験機体は、通常のN字型波形の衝撃音を発するものと、N字型波形の角が丸くなるよう設計した低ブーム型波形の2種類。いずれも先端が長い円錐状をした直径60cm程度のロケット形だが、低ブーム型波形モデルの方が長さ8mと、同5.6mのN字型波形モデルに比べて細長い。
実験は、スウェーデンのスウェーデン宇宙公社エスレンジ実験場(キルナ市)で5月7日と16日の2回実施、気球に両タイプの試験機体を載せて上空に運び切り離した。試験機体は、自由落下によって音速を超え衝撃音を発するが、これを地上と高度1kmに係留した気球の計測システムでとらえた。この結果、低ブーム型が通常のN字型より衝撃音が半減することが分かり、衝撃音を低減させる機体の設計概念を実証できたという。
No.2011-20
2011年5月16日~2011年5月22日