(独)農業生物資源研究所は5月18日、繭(まゆ)から手作業で作られる真綿(まわた)と同じ暖かさ・吸湿性などを持ち、製造工程の機械化によって製造コストの低減が可能なシルク綿(わた)「シルクフィル」を開発したと発表した。
シルク(絹)の綿としては、古くから真綿があったが、繭から綿を作る工程が全て手作業なため高価なものとなっていた。このため、保温性、吸湿性、柔らかさなどに優れたシルクを、真綿よりも安く製造する技術の開発がかねて望まれていた。
同研究所では、これまでにシルクの綿として、「シルクウェーブ」を開発していた。シルクウェーブは、大量(1,500粒~2,000粒)の繭から繭糸を引き出し、すぐに乾燥させて枠に巻き取り、繭糸のクリンプ(ちじれ)状態を残したものだが、水洗いができず、洗濯はドライクリーニングに限られるという難点があった。
今回、開発したシルクフィルは、全く新たな発想で製造工程を機械化することにより、手作業の真綿に比べて製造コストの低減が可能になった。
シルクフィルの製造方法は、大量の繭から一斉に糸を引き出し、引き出した繭糸をぬれた状態のまま外周1.5mの大枠に巻き取り、炭酸ナトリウムなどのアルカリ液に漬けて不要成分のセリシン(タンパク質の一種)を溶かし出し必要なフィブロイン繊維だけにして乾燥。ほぐして綿状にするというもの。
ほとんどの工程は、機械化が可能で、製造能率が向上した。製造コストは、製品により異なるが、眞綿の3分の2から2分の1。また、シルクフィルは、シルクウェーブと異なり水洗いができる。
シルクフィルの特性については、布団綿として求められる嵩高さ(かさだかさ=ふくらみがあること)や重量感 、綿を圧縮した時の回復性や抵抗感を、市販の綿や、羊毛、カシミヤ、ポリエステル、真綿などと比較して調べた。
その結果、シルクフィルは、長繊維のため、布団にした場合に真綿のように布団の表面から繊維が出てくることがなく、ふくらみがあり、圧縮回復性や水洗い後の回復性も、真綿布団より優れていることや、7~8μ(ミクロン、1μは100万分の1m)の繊維が重なり合っているため、薄くても保温性に優れていることなどが分かった。
No.2011-20
2011年5月16日~2011年5月22日