アスベストを除去現場で無害化する装置を開発
:産業技術総合研究所/大成建設

 (独)産業技術総合研究所と大成建設(株)は5月18日、アスベスト廃棄物を発生現場で溶融し無害化する装置を共同開発したと発表した。ハロゲンランプ光源、回転楕円型反射鏡を使った集光加熱技術と、アスベスト廃棄物を成形する技術をシステム化して実現した。これにより、これまでは困難とされてきたアスベスト廃棄物作業現場でのオンサイト溶融処理技術の確立が期待される。
 アスベスト廃棄物の処理では、処分場への運搬の際の飛散リスクや新しい処分場立地の困難さなどから、アスベスト除去現場での溶融無害化処理が強く求められている。しかし、アスベスト廃棄物の溶融に必要な1,500℃前後の高温での処理技術は、まだ実用化されていない。産総研と大成建設は、個々に進めていた装置開発や応用技術開発を合体させ装置開発に成功した。
 作業現場で剥離・除去されたアスベスト廃棄物は、大成建設開発の成型システムで粉砕・押し出し成形され、棒状にされる。その棒を産総研が開発した集光加熱溶融装置の炉に吊し、棒の下端から加熱、溶融処理する。炉は、ハロゲンランプと金メッキされた反射鏡で構成され、非接触で加熱する。棒状にしたアスベスト廃棄物の下端は、溶けて液体状になり、重力で落下し、冷却後排出される。
 こうすれば、処理施設に運んで溶かす方式よりコストを低減できる。研究者は、この装置を使って作業現場でアスベスト廃棄物を溶融処理し、透過型電子顕微鏡観察により処理後の廃棄物にアスベスト繊維が含まれていないことを確認している。
 産総研では今後、処理速度を更に改善するなど、実用化に向けて実証試験を重ねて行くことにしている。
 国内で処理が必要な飛散性アスベスト廃棄物の残量は、少なくとも数百万tに上ると見られている。

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