セシウムを吸蔵し閉じ込める新材料の開発に成功
:物質・材料研究機構

 (独)物質・材料研究機構は5月18日、セシウムを高濃度に吸蔵し、長期間安定的に閉じ込めておくことができる新材料を開発したと発表した。使用済み核燃料再処理工場から出る高レベル放射性廃棄物中のセシウムの処理を念頭に開発したもので、これまでのガラス固化による閉じ込め方式に比べ、溶出率を低減でき、処理装置の小型簡略化が期待できるという。
 開発したのは、熱的・化学的安定性に優れる酸化チタンを固化体として利用した材料。酸化チタンとセシウムを溶解した酸化モリブデン溶融体を電気分解することによって、高濃度セシウムを吸蔵した針状結晶のチタン酸固化体を得た。セシウムは、酸化チタン分子が作るこの針状結晶中のチューブ状の隙間に1列にびっしりと並んで取り込まれるという。
 チタン酸固化体は、地下水や土壌に接触してもセシウムの溶出箇所が針状結晶両端のごく狭い領域に限られるため、セシウムの溶出が強く抑制される仕組みだ。セシウム閉じ込め効果を150℃の水熱条件で評価したところ、1週間後の時点で、チタン酸固化体からのセシウム溶出率は、標準的な固化体の一つであるホウケイ酸ガラスからの溶出率の170分の1以下であったという。
 酸化チタン固化体によるセシウムの処理は、装置を小型化、簡略化できる利点があり、放射性セシウム同位体の処理技術の進歩に貢献する成果としている。

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チタン酸固化体の電子顕微鏡写真(提供:物質・材料研究機構)